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LaundryHeavenly.
第12章 Heavenly.12
「──!そ…」
「遺書めいたものは何もなかったし口封じの線も無きにしもあらずだけど。…自分で逝ったんだよ、きっと」
ハイジさんは再び目を伏せた。
まるで思いを馳せるかの様に。
「……」
出過ぎた思いだと承知しているけれど
私には彼女の気持ちがわかる気がした。
ずっと虐げられて快楽の道具にされ続け
逃げる事も逆らう事も許されることなく
ただただ従い尽くす日々を過ごした彼女
彼女にとってナノさんの存在は
どれほど救いだったことだろう。
私がお嬢様に抱くものと同じだ。
しかし彼女はそれが仇となった。
それがきっかけで全てが壊れた。
限界を迎え…否、超えてしまったのだ。
私も確信した。彼女は自ら絶ったのだ。
真実なんて分からない。
彼女の本当の気持ちも。
おこがましい事だけは分かっている。
それでも溢れる涙は止まらなかった。
「…には面影があるんだ」
嗚咽を漏らす私の耳に
ハイジさんの呟きは届かなかった。
「──さて、総監は厄介者の次男を一刻も早く目の前から消したかった」
感慨深さに浸る間もなく話は再開する。
「でも唯一残された実子。総監は事情でもう子供が望めなかったから、殺すわけにはいかない。だから、友人に頼んだ」
「…友、人…?」
「うん。その友人は神父さんだったけど、王室軍の上層部にも顔が効いた。彼は丁度その頃結成されることになってた、自分の息子が長になる部隊にナノを入れて面倒みさせることにした。それが、うち。45部隊」
何かがどんどん繋がっていく。
そんな感覚。滲む涙を拭った。
「総監の友人は、ブライトのパパ。…世間はねー、狭いんだよー」
やんなっちゃうよね、と苦笑しながら
ハイジさんは柔らかい布で涙を拭いてくれた。
「当時のナノはね…まーあ手ぇかかったんだ。居るじゃない?集団の中でわざわざ浮く奴。やたら冷めてて。事情が事情なのは分かってたけどあまりにも態度悪くてさ。うちでブライトに一番殴られてるの、あの子だからね」
「え…っ」
「見えないでしょ?美形は顔の治りが早いから。…でもブライトはすごいよ。任務抜きにしても毎日毎日根気よく接し続けて、ナノの心開かせたんだから」
話すハイジさんの表情は
心なしか誇らしげだった。
そして今度はブライトの話だね、と銘打ち
私が知らない彼の姿を語り始めたのだった。