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LaundryHeavenly.
第12章 Heavenly.12
「や、ブライト達の相手してた訳じゃないよ」
固まる私に対し、誤解しないでねと
彼はいつもの屈託ない笑顔を見せた。
「ほんと、子供の頃さ。9歳頃かなあ?目が覚めたら知らない部屋にいて知らない大人達がいて裸にされてしゃぶらされて突っ込まれて。わかるよね。"検分"だよ」
「…」
「それから毎日客取ってた。…ずっとずっと思ってたんだよ。何でこーなったのかなぁって。普通に父さんがいて母さんがいて弟も妹もいたはずなのに。でもある日教えられた」
知ってしまったは非情な現実
自分たちが『売られた』事実。
何故なのかは今もわからない。
───わかるのは。家族はもういない。
頼る相手もいない。帰れる場所もない。
ならばここで生きるしかない。自力で。
「必死だったよ」
少年趣味の男は意外にも多く
毎日毎夜、客は絶えなかった。
怖ぞ気が立った。吐き気がした。
だがその変態どもは、生きるためには
必要不可欠な存在。飽かれるのだけは
なんとしてでも避けなければならない。
ならばどうすれば相手は悦ぶか。
何をどう言えば気に入られるか。
ひたすらそればかり考えてきた。
皮肉にもそれが今の職務『謀略』に
一役買ってくれているんだよね、と
ハイジさんは言う。彼は止まらない。
食事は辛うじて3度与えられるものの
残飯同然のもの。量もとても少なく
ゴキブリが這っていることもあった。
「だから今もゴキブリだけはダメ。でね、そんな超劣悪な環境でも体だけは育ってくの。すごいよね」
成長する。すなわち客が望む
『少年』ではいられなくなる。
それが自分は一番恐ろしかった。
「だから色んな意味で"口だけで"生きてけるようにしたの。"おしゃべり"と"おしゃぶり"で」
「……」
そのおかげでお茶を引くことはなく
娼夫から足を洗った後も
『おしゃべり』を買われ女衒にもなれた。
『おしゃぶり』が忘れられなくて
今なお、呼び出してくる客もいる
その相手に私は驚愕を隠せなかった。
「ブライトのパパもナノのパパも昔からのお得意様。稼がせてもらったよー。ちなみにナノ家のお家事情は、当時総監のチンコしゃぶってる最中に聞かされた話。人間気持ち良くなっちゃうと口軽くなってダメだね」
だから娼が付く人の一番大事な仕事は
守秘義務なのさ、と。彼はいたずらに笑った。