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猫彼女。
第3章 cat.3
「あっくん…」
「…ん?」
えりさが顔を離す。ほら…鼻水出てるよ。
不謹慎かもしれないが、ぐちゃぐちゃの泣き顔も可愛いかった。
「あた…あたし…っ、どうしよう…こんな……っ」
「大丈夫、大丈夫だよ」
何が『大丈夫』なのかなんて分からない。
もっと気の効いたことを言ってやりたいけど
元々が口下手な俺には難しい。
とにかく大丈夫だと繰り返しながら
ウェットティッシュの袋から無造作に引き出した何枚かで顔を拭ってやる。
「仕事だって…休めな…っ、でも、こんなんじゃ…、どうしよう…っ」
この状況でも仕事の心配。ほんとに真面目なんだな。
いつも自分より他人や周りのことばかり考えてるえりさ。
俺には真似できないよ。
「耳はこれは…ヘアバンド?巻けば…隠せるんじゃない…かな?」
「でも…尻尾…っ」
「尻尾は……うーん…さらしで巻く?」
「……。さらしって!…」
考えて考えあぐねて咄嗟に出た案だったんだけど
幸いそこがツボにハマってくれたらしく、
えりさは少しだけ笑ってくれた。
でもそれがきっかけになったようで、
ようやく泣き止んでくれた。
ぺたん、と俺の肩に頭を乗せたえりさ。
大丈夫、かわいい。
大丈夫。かわいい。
彼女をなだめるためと自分の感情をこめて
頭をゆっくりと撫で続けた。