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メンズミーティング
第14章 彼女から見た彼女。2
『キャンセル料は払うよ』
「そうじゃないでしょ!?」
気づいたら声を張り上げていた。周りの視線(と言っても幸い皆営業に出ていたため、残っていた2~3人)が一気に集中する。作り笑いを浮かべて誤魔化し、携帯に向き直った。
「……」
あたしは彼にとって何なんだろうか。
彼はあたしの世界に足を踏み入れない。
それは彼が、彼の世界にあたしが踏み入ることを歓迎していないからだ。
誕生日すら祝わせてくれないの?
あたし達、付き合ってるよね?
あたしは、あなたの恋人よね?
お祝いしたい。そんな気持ちすら
叶えさせてもらえないの?
ねえ、言ったよね?
あたしがあなたとの時間を心置きなく過ごすために、死ぬほど頑張って、先月中に今月分のノルマまで終わらせたって。
あたしの仕事がどれだけ神経すり減らすか、どれだけ嫌われ疎ましがられ邪魔者扱いされるか。どうしてわかってくれないの?
ドタキャンはこれが初めてじゃない。
今までだって、何度もあった。
その度に仕方ないと思ってた。
彼は多忙。来たくても来られないんだ。
彼もあたしに会いたいの我慢してるんだ。
そう思ってた。…ううん。思うようにしてた。
ねえ、どうして?よりによって今日なの!?
あたし達、付き合ってるんだよね?
あなた、あたしのこと好きだよね?
どうして、わかってくれないの?!
「…ひどいよ」
あたしのなかはぐちゃぐちゃだった。
鼻の奥が痛い。泣きそうだ。
いけない。さすがに涙まで流すわけにはいけない。ここは会社だ。必死でこらえた。
ふたりでいる時の彼は、自分より年上のあたしを、まるでお姫様のように扱ってくれる。
何でもしてくれて、何処へでも連れていってくれて、優しく抱いてくれて。
端正な顔立ちの彼は周りからも羨望の的。
彼を褒められる度に優越感に浸れた。
そのうえ、会えない時間が長くても
彼は浮気なんか絶対にしなかった。
あたしは彼を手放したくない。
他の女になんか渡したくない。
彼はあたしのものだ。
……でも……
その時、手の中でまた振動を感じた。
彼からの電話?メッセージ?すぐに画面を確認する。期待は外れた。男友達からのL1NEだ。