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メンズミーティング
第14章 彼女から見た彼女。2
「大事な子」
久々に対面した元彼は『その女』を胸に抱いてそう言った。
あたしの目の前で。
─────────
幸せになるために彼と別れたのに。
あれからあたしは、最低のドン底にいた。
不倫からの略奪婚。その代償は大きかった。
式は挙げずに籍だけ入れて。出産して、育休明けて、復帰した当日。元嫁があたしの会社に乗り込んで来て、全部暴露していった。尾びれ背びれをたっぷり付けて。
おかげであたしは首こそ切られなかったものの、謹慎からの降格、減給処分になった。
更に…世間て狭い。元嫁、よりにもよってうちのお局(超優良成績者)の姪っ子だった。
普通の恋愛婚てことにしてたから、上司や同僚からの信頼は地に落ちた。そのうえ「あなたもあなたの会社も信用出来ない」と有建のおぼっちゃまくんを筆頭に、顧客の解約が相次いだ。
見込客も消えた。誰に電話しても繋がらない。メールもL1NEも返信無し。訪問しても居留守を使われる。
ママ大好きな旦那とは喧嘩ばかり。この3日間は口も聞いていない。
保育園に入れず、近距離別居の姑に日中預けている旦那そっくりの子供。あたしの顔さえ見れば嫌味満載の姑とずっと一緒にいる訳だから、あたしに懐く筈もなく。正直もう可愛いとは思えなくなってきていた。
自分の実家は縁を切られて頼れない。
職場にも家庭にも居場所がない。
逃げ場がない日々。もう、限界だった。
そんな時に飛び込んで来た、病院勤めの妹からのL1NE。
…天の助けかと思った。
『お姉の元彼、入院してきたよ!』
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『好きだよ、ちえ』
会えなくても、決して他の女になんか目もくれなかった彼。会えたときは、まるでお姫様のようにあたしを扱ってくれた彼。
あの時のあたしはどうかしてた。ちょっと会えないくらいで脇道逸れて。
またあんな風にされたい。
甘やかされたい。触れられたい。
…抱かれたい。
一時だけでもいい。この現実を忘れたい。
うわべだけでいい。愛なんかなくていい。
「麗くん…」
淡い期待を抱いてその戸を開けたあたしは、
更に打ちのめされることとなったのだ。