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メンズミーティング
第19章 歪愛 [ イビツアイ ]
「おにいちゃん!」
満面の笑みで小さな手を差し出してきた、6歳下の異母弟。沙羅さんの子供。沙羅さんと流一朗さんの子供。
流一朗さんから一文字とって『流星』。2回の悲しいお別れを乗り越えて、やっと生まれてくれた宝物なの。仲良くしてね。沙羅さんは心底嬉しそうにそうのたまった。
病弱だという異母弟は、小柄で華奢で、常に怯えた表情をしていた。どうして?こんなに大きい家に住める金持ちで、何不自由ない暮らしをしているくせに。
──ああ、お父さんのせいか。でもお前には、お前を『一番』にしてくれる人がいるじゃないか。
お父さんの一番は自分自身。
お母さんの一番はお父さん。
沙羅さんの一番は流星。
ほらね。僕には誰もいないんだよ。
目の前の小さな異母弟はもはや
憎悪と嫌悪と──嫉妬の対象でしかなかった。
「お前なんか大嫌いだよ」
────────────
異母弟を生きたサンドバックにして過ごすこと、数年。おぼろ気ながら将来のことを考え始めた。
どうせこの家も会社も『本妻』の子である流星のものになる。ならば食いっぱぐれのない職に就かなければ。
幸い成績も内申も申し分ないし、何よりこの家にはお金がある。進学先に制限はない。
選んだ先は他県の全寮制中高一貫校。
選んだ将来は──医の道だった。