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第2章 優しい人
「兎に角、なんか作れ、役にたたねぇようなら、置屋に引き渡すぜ、置屋ってのは売春宿の女将がいるところだ」

絢音は置屋に連れて行くと言われてギクッとした。

「あの、やります……」

焦るように言って木箱のそばにしゃがみこんだ。

「んー、じゃ、やってくれ」

絢音の言葉を聞いて辰は部屋に行った。
畳みかけの布団を丸めて背中を預け、タバコを出して火をつけた。
絢音は流し台の前に立って野菜を洗っている。
小さな背中を見ながら煙を吐き出したが、こんな頼りないガキが飯を作れるのか?と半信半疑で眺めていた。

絢音は贅沢な食材に触れるだけでドキドキしたが、箱の中には調味料もちゃんと入っていたので、まずガス釜でご飯を炊き、魚の煮付けを作る事にした。
魚を綺麗に処理して煮たら、次に野菜の煮物、それにおひたしを作り、魚のアラを使って汁物を作った。

一時間ちょっとかけて料理が完成した。
盆に乗せてちゃぶ台へ運んで行くと、辰は胡座をかいてちゃぶ台の前に座った。

「ほおー、すげーな、ガキの癖にちゃんとできるじゃねぇか」

正直あんまり期待してなかったが、湯気を立てる料理を見て感心した。
パッと見、そこらの食堂並みの出来栄えだ。

「っと……、今お茶をいれます」

絢音は棚を探って急須や湯呑みを出し、茶を入れる為に湯を沸かしていた。

「茶もか?気が利くな~、お前、合格だ、こんだけできりゃこっちは助かる、そんな痩せこけてる癖に立派じゃねぇか」

辰は上機嫌になり、大袈裟に褒めて絢音を家に置くと決めた。

「あ……はい」

絢音は怖いと思っていた辰に褒められ、喜んでいいのか戸惑って、とりあえず返事をした。

「あんな、茶はいい、お前も座って食え」

辰は一緒に食べるように言う。

「はい……」






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