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第9章 悪い癖
しかし、言わなければ……長く共に過ごす程、別れが辛くなる。

「絢音……」

決心して声をかけた。

「はい」

絢音は笑顔で振り向いた。

「まだ決まったわけじゃねぇが……、すみれの引き取り手が見つかった」

言いづらかったが、思い切って率直に伝えた。

「あっ……、そうなんだ」

絢音は顔色を曇らせ、辰はやっぱりと思って焦った。

「なあ絢音……、すみれをここに置いとくわけにゃいかねぇからな、こんなとこで育ったらろくな事はねぇ、俺が身勝手な事をやらかして……百合子は死んだ、それは本当に反省した、これからはガキができるような真似はしねぇ、女遊びは控える、だからよ、すみれには幸せになって貰いてぇ」

辰は絢音を見ているうちに気持ちに変化が生じていた。
百合子が望んだから……そのせいにして逃げようとしたが、絢音は自分と契る約束まで交わしている。
大なり小なり、百合子に嫉妬していた筈だ。
それなのに、自分と百合子の子供かもしれないすみれを、愛情を持って慈しんでいる。
そんな姿を見たら、申し訳なくなるのと同時に事の重大さを思い知らされた。

辰は真面目に考え、自分なりに答えを出していた。
それらを明かし、できるだけ絢音のショックを和らげようとした。







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