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第9章 悪い癖
ああ、お宅なら安心だ、この子は10日位うちで預かったが、赤ん坊にしちゃ楽な方かもな」

辰は赤ん坊なんか知らなかったが、すみれはグズグズ泣き出しても、絢音があやせば直ぐに泣き止む。
それで、多分育てやすい方だと思った。

「おお、そうか……、それは助かる、っと……、そこにいる君、君が面倒をみていたのか?」

夫はふと絢音の存在に気づき、体を傾けて聞いた。

「はい……」

絢音は辰の陰に隠れるようにしていたので、遠慮がちに返事を返した。

「そうか……、世話してくれてありがとう」

夫は……年の頃からして湯女か売春婦として売られてきた少女ではないかと、心の中でそう思っていた。
辰がヤクザなのは分かっている。
この夫でなくとも、そう考えるのが普通だ。
絢音の事を気の毒に思い、頭を下げて礼を言った。

「いえ……」

絢音は首をすくめて答えたが、絢音にはこのお金持ちの夫婦が光り輝いて見えた。
自分とは住む世界が違う人間だからだ。

「それじゃあ、柏木さん、すみれちゃんを今すぐ連れて帰ってもいいかね?」

夫は絢音から目を逸らし、辰に聞いた。

「ああ、構わねぇ、抱いてみるか?」

辰はすんなり承諾すると、2人を交互に見て聞き返す。

「あ、じゃあ……私が」

妻の方が一歩前に出て言った。







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