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縁
第9章 悪い癖
すると、絢音が走りよってきた。
「ああ、お嬢ちゃん、なんだい?」
夫は優しげな声色で聞いた。
「すみれちゃんを……最後に見せてください」
これでお別れだと思ったら急に寂しさが込み上げ、慌ててやって来たのだが、絢音は悲しげな顔で夫に向かって頼んだ。
「ああ、そうだね、君が世話したんだから……、おい、お前……」
夫は妻に声をかけた。
「わかりました、さあ、どうぞ」
妻は膝を曲げて中腰になり、少しだけ腕を前に出してすみれを絢音に見せた。
「すみれちゃん……、元気で」
絢音はすみれの寝顔に向かって言った。
「どうかな……、もういいかしら?」
妻はやんわりと聞いた。
「はい……」
絢音はコクリと頷き、名残り惜しむようにすみれを見た。
「それじゃ、失礼します」
夫婦はもう一度頭を下げ、ドアを開けて外に出て行った。
ドアが乾いた音を立てて閉まり、絢音は悲しくなって俯いた。
「絢音……、悲しむな、いい旅立ちじゃねぇか、喜んでやらなきゃな」
辰は絢音の肩に手を置いて言った。
「はい……」
絢音もいい家に貰われていって良かったと思っていたが、涙が零れそうになるのを必死に堪えていた。
「ああ、お嬢ちゃん、なんだい?」
夫は優しげな声色で聞いた。
「すみれちゃんを……最後に見せてください」
これでお別れだと思ったら急に寂しさが込み上げ、慌ててやって来たのだが、絢音は悲しげな顔で夫に向かって頼んだ。
「ああ、そうだね、君が世話したんだから……、おい、お前……」
夫は妻に声をかけた。
「わかりました、さあ、どうぞ」
妻は膝を曲げて中腰になり、少しだけ腕を前に出してすみれを絢音に見せた。
「すみれちゃん……、元気で」
絢音はすみれの寝顔に向かって言った。
「どうかな……、もういいかしら?」
妻はやんわりと聞いた。
「はい……」
絢音はコクリと頷き、名残り惜しむようにすみれを見た。
「それじゃ、失礼します」
夫婦はもう一度頭を下げ、ドアを開けて外に出て行った。
ドアが乾いた音を立てて閉まり、絢音は悲しくなって俯いた。
「絢音……、悲しむな、いい旅立ちじゃねぇか、喜んでやらなきゃな」
辰は絢音の肩に手を置いて言った。
「はい……」
絢音もいい家に貰われていって良かったと思っていたが、涙が零れそうになるのを必死に堪えていた。