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第10章 クズの半生反省
辰はいたが、隣に見覚えのある男が立っている。
町で世話になったヤスだ。

「おお、絢音ちゃん久しぶり、元気そうだな」

ヤスは絢音を見て笑顔で話しかけてきた。

「っと……、はい、お久しぶりです、町ではお世話になりました」

絢音はヤスに向かって頭を下げ、礼を兼ねて挨拶した。

「おお~、きっちり挨拶したな、おい辰、お前の娘にしちゃ上出来じゃねぇか、なははっ!」

ヤスは本気で感心していたが、辰の肩を叩いてふざけて言った。
辰はまだ本当の事を話してない。
もし絢音を嫁にするなら、親分にも話さなきゃいけないが……なかなか言えずにいた。

「ま、上がれ」

とりあえず、ヤスに上がるように言った。

「おう、邪魔するぜ、ん~、ひと部屋しかねぇんだな」

ヤスは部屋に上がり、キョロキョロ見回している。

「いーんだよ、どうせ寝るだけだ」

「しかしよ、娘がいるのに不便じゃねぇか?」

「別に、慣れりゃなんて事ぁねぇ、但しこういう事情だからよ、お前を泊めてやる事はできねー、この金を渡しとく、これで宿をとるなり、女を買うなり、好きにしてくれ」

辰は上着のポケットから封書を取り出すと、ヤスの前に差し出した。

「ん?金って……、何故俺に金を渡すんだ?」

ヤスは受け取ろうとはせずに怪訝な顔で聞き返す。

「すみれの事でお前に世話になった、これはその礼だ」









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