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第10章 クズの半生反省
「つめてぇな、俺は乳飲み子だったお前を育てたんだぞ、もし俺が山にでも放り投げたら、お前はここにはいねぇ」

「それは……」

父親の言った事は事実だったが、それは絢音にはどうにもならない事で、絢音は言葉に詰まってしまった。

「ヤクザはどうした、いねぇのか?なんでもこの温泉場を仕切ってるらしいな、どおりで金回りがいい筈だ」

絢音は辰の事を言われてハッとした。
今はヤスが来ているし、もし父親と遭遇したら親子じゃない事がバレてしまう。

「帰って……!あなたなんか父親じゃない、私はあなたに売られた時に縁を切りました」

焦るような気持ちで出て行くように言った。

「絢音、ひでぇ事を言うな、父さんはこの通り、乞食も同然だ、お前しか頼る者はいねぇ、な、助けてくれ」

「私は……稼ぎがあるわけじゃない、養って貰ってるだけ、だからお金はありません、出て行ってください!」

絢音は必死に訴えたが、事実、絢音は金を持っているわけではない。

「嘘つくな、そんないい服着て、金のネックレス、それに……見違えるように成長した、ガリガリに痩せた子供だったのに……ふっくらとして美人になった、母さんを思い出す」

父親は立派に成長した娘を見てしみじみと言った。

「やめて!私は……私にはなにも出来ない、帰ってください!」

絢音は兎に角立ち去って貰いたかった。

「おい、お前!」

だが、辰の怒鳴り声がした。

「あぁ?」

父親は怠そうに声のする方を見た。

「てめぇ、ここでなにしてる」

辰は父親の胸倉を掴んで今にも殴りかかる勢いだ。






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