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第10章 クズの半生反省
「人聞きの悪い事を……、俺は他に頼る者がいねぇから、我が子に会いに来ただけだ」

父親は恥も外聞もなく平然と言った。

「なにが我が子だ、娘を女衒に売っぱらってよく言えるもんだ、絢音は俺んとこに来た時はガリガリに痩せてた、お前がろくに食べもんを食わせてなかったからだ、それに……女衒に売ったらどうなるか、知らねぇとは言わせねぇぞ、遊女に売女、湯女……、そうなる事を承知で売ったんだ、絢音はもうあんたの子じゃねぇ、俺が女衒から受け取ったんだからな」

辰の言った事は、絢音の気持ちを代弁していた。

「旦那が直接絢音を受け取ったのか、あの時、確かにこの子は痩せていた、歳も10歳だったからな、せいぜい下働きだ、なのに何故旦那が?そういう趣味でもおありかな?」

父親は経緯を聞いて卑しい想像をした。

「ふざけるな!誰がガキに欲情するか、っの糞親父、脳みそまで腐ってんのはてめぇの方だ」

辰は頭にきて怒鳴りつけた。

「ああ、確かに……、しかし旦那ぁ~、俺は乳飲み子のこいつを育てた、せめてその分をめぐんでくれませんか?でなきゃ俺は帰る旅費すらねぇ」

父親はまったくへこたれず、厚顔無恥も甚だしい事を言ったが、とっくの昔にまともに生きる道を捨てている。
ある意味、怖いもの無しだった。

「ちっ、ったく……」

辰は舌打ちすると、懐から財布を出して札束を引っ張り出した。

「ほら、持ってけ、その金を持ってどっか他所に行け、今度来たら川に放り込むからな」

それを父親に突き出して恫喝したが、父親はニヤニヤしながら受け取った。

「こりゃどうも、ありがてぇ、わかりました、それじゃ俺は退散します、絢音、いい旦那で良かったな」

父親は目的を達成して納得したらしく、辰にペコペコ頭を下げ、絢音にひとこと言い残して踵を返した。

辰は顰めっ面で父親が階段を降りるのを見ていたが、ヤスは聞きたくて仕方がなかった。

「おい辰……、手ぇ出されちゃ困るからって言ったが、確かあの親父、10歳って言ってたな、お前……絢音ちゃんが10歳の時からここに置いてたんだな」

「ああ、ま、中に入ろう」

辰は説明するのが面倒だったが、どのみち話さなきゃならない。
ヤスに上がるように言った。




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