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第11章 悲しい性
「そりゃあな、絢音ちゃんが料理上手だからよ、それで張り切ってんだ」

ヤスは絢音を褒めたが、それは辰の気持ちを代弁するようなものだった。

「そうなのかな……、ほんとに辰さんには世話になりっぱなしで」

あんまり褒められると恥ずかしくなる。
絢音は感謝を口にして誤魔化した。

「あーあ、俺も料理上手なカミさんを貰いてぇわ、けどよ、俺は本当に親子だと思ってた、だから養子の話をした時は呆れたぜ、またガキを作ったのかよ……って、はははっ」

ヤスはまだ独り身だ。
辰と絢音の出会いが偶然だった事はわかるが、自分もこんな娘を嫁に出来たら……と、つくづく羨み、冗談っぽく言って笑った。

「あの、すみれちゃんは……元気ですか?」

しかしそんな話を聞いたら、絢音はすみれの事が気になってくる。

「ああ、すっかりお嬢様だ、まだちいせぇけど、あの夫婦は2人して猫っ可愛がりしてる」

すみれが無事養子に迎えられた後は、ヤスが夫婦とじかに関わる事はなくなった。
カタギの人間とは住む世界が違うからだが、とは言っても、ヤスはそれとなくすみれの様子をうかがっていた。

「そうですか……、良かった」

決して疑っていたわけじゃないが、猫っ可愛がりされていると聞き、絢音は心底安心した。






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