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第11章 悲しい性
鍵は開けたままだ。
絢音は嫌な予感を覚え、その場に突っ立っていた。

「絢音ちゃん、待て、開けるな」

ヤスは絢音に言って立ち上がり、自分が玄関に向かったが、絢音には部屋に戻るように言った。
絢音が頷いて部屋に戻ると、ヤスはゆっくりとドアを開けた。

「どーもです、旦那ぁ~、お宅様は早川組のお仲間と聞きました、いやー、こないだ旦那に助けて貰ったお陰で、この通り……乞食から普通の人間に戻る事が出来ました」

嫌な予感的中だ。
やって来たのは絢音の父親だったが、薄汚れた顔ではなく、小綺麗な身なりをしている。
辰に貰った金で風呂に入り、新しい服を買ったのだ。
父親はヤスに話しかけ、ニヤニヤ笑っている。

「なんだ、また金か?」

ヤスは無愛想に聞いた。

「いいえ、せっかくこんな山奥まで来たんです、娘に会いに来ました」







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