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第11章 悲しい性
◇◇◇

父親は安宿を借りて温泉場にとどまっていたが、実は……家や僅かばかりの土地も、全て売り払って酒代に替えていた。

いよいよ何も無くなって自暴自棄になり、泥酔して道端に寝転んでいたら……懐かしい夢を見た。
絢音が一生懸命家事をしている。
どこかで寄せ集めてきた野菜を調理し、暖かなお粥を作った。
「お父さん、出来たから食べて」と、揺すり起こしてくれる。
イライラしてつい怒鳴ったら、涙を堪え、それでも尚勧めてくる。

そこで目が覚めた。
絢音は痩せてはいたが、器量のいい子だった。
今頃はきっと美しく成長し、遊廓か或いは売春宿か、どちらにしても稼ぎ頭になっているだろう。
あんなに優しくしてくれたんだ。
今の自分を見たら、力になってくれるに違いない。

父親はふとそう思い、この温泉場にやって来たのだった。







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