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第11章 悲しい性
父親だという証拠がないと言って断った。
すると父親は、見るからにくたびれたバッグの中を探り、中から小さな木箱を取り出した。
絢音のへその緒だ。
そんな物を目の前に出され、わざわざ箱を開けられたりしたら、たまったものではない。
店主は眉を顰めて困惑したが、父親の言う事を信じて金を貸した。

父親はまんまと泡銭を手に入れる事ができたが、絢音のところへ行く事も忘れてはいなかった。


その翌日、昼前に宿を出た。
昼間の人通りが疎らな通りを歩き、アパートの階段を上がって目的の部屋に到着した。
ドアを叩いたが、返事はなく静まり返っている。
絢音はひとりでいたので、部屋の隅に逃げてじっとしていた。

「絢音、いるんだろ?開けてくれ、父さんだ、お前の顔が見たくてやって来たんだ」








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