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縁
第11章 悲しい性
絢音は部屋で聞き耳を立てていたが、父親が辰を利用して金を借りた事を知り、愕然として目眩をおぼえた。
ただでさえ辰に迷惑をかけているのに、とんでもない事になったと……胸を痛め、その場にへたり込んだ。
辰は頭にきたが、金貸しに落ち度はない。
ひとまず金を返す事にしたが、金を渡した後で切り出した。
「あのな、確かにあいつは絢音の父親だったが、奴は今俺が面倒みてる絢音を……女衒に売ったんだ」
きっちり話をしなければ、あの男はまたやる。
「しかし持病があって働けないと言ってましたよ、心臓が悪いとか、娘を苦労して育てたが、食う物も与えてやれず、泣く泣く女衒に渡したと」
金貸しは首を傾げ、父親から聞いた話を口にする。
「持病は嘘だ、奴は酒に溺れ、働こうとはせず、その挙句娘を売ったんだ」
辰は事実を明かした。
「あ……っとー、そうでしたか、いやはや私とした事が……、このご時世、ろくでなしはごまんといる、なるほど……それでは売った娘にまだしがみつきに来たと、そういう事でございますね?」
金貸しは日頃から辰の事を信用している。
うっかり父親を信じた自分が恥ずかしく思え、罰が悪そうに聞いた。
「そういうこった、次は貸すな、もし貸しても俺は払わねぇぞ」
辰はキツく釘を刺した。
「よくわかりました……2度と相手にしません、旦那にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
金貸しは辰に詫びると、遠慮がちに頭を下げて立ち去った。
辰は部屋に戻り、ポケットからタバコを出して咥えたが、ふと見れば……絢音は身を縮めて正座している。
黙っていられなくなった。
「絢音、お前……また責任感じてるだろ」
「すみません……ごめんなさい!」
案の定、絢音は土下座して謝る。
「だからよー、そういうのはよせ、金の事はいい、それよりお前……最近言わねぇが、親父、来てるんじゃねぇのか?」
辰はそんな風に謝られるのは嫌だったが、それよりも、絢音が父親の事を話さなくなった事を気にしていた。
「あの……はい、来てます」
絢音は起き上がり、迷いながらも正直に言った。
「だろうな、俺に気ぃ使うな、きたら来たって言え」
辰はもっと自分を頼って欲しいと、そう思っていた。
「はい……」
けれど、絢音にとって父親の事は口にするのも嫌な位負担になっている。
自信なさげに返事を返した。
ただでさえ辰に迷惑をかけているのに、とんでもない事になったと……胸を痛め、その場にへたり込んだ。
辰は頭にきたが、金貸しに落ち度はない。
ひとまず金を返す事にしたが、金を渡した後で切り出した。
「あのな、確かにあいつは絢音の父親だったが、奴は今俺が面倒みてる絢音を……女衒に売ったんだ」
きっちり話をしなければ、あの男はまたやる。
「しかし持病があって働けないと言ってましたよ、心臓が悪いとか、娘を苦労して育てたが、食う物も与えてやれず、泣く泣く女衒に渡したと」
金貸しは首を傾げ、父親から聞いた話を口にする。
「持病は嘘だ、奴は酒に溺れ、働こうとはせず、その挙句娘を売ったんだ」
辰は事実を明かした。
「あ……っとー、そうでしたか、いやはや私とした事が……、このご時世、ろくでなしはごまんといる、なるほど……それでは売った娘にまだしがみつきに来たと、そういう事でございますね?」
金貸しは日頃から辰の事を信用している。
うっかり父親を信じた自分が恥ずかしく思え、罰が悪そうに聞いた。
「そういうこった、次は貸すな、もし貸しても俺は払わねぇぞ」
辰はキツく釘を刺した。
「よくわかりました……2度と相手にしません、旦那にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
金貸しは辰に詫びると、遠慮がちに頭を下げて立ち去った。
辰は部屋に戻り、ポケットからタバコを出して咥えたが、ふと見れば……絢音は身を縮めて正座している。
黙っていられなくなった。
「絢音、お前……また責任感じてるだろ」
「すみません……ごめんなさい!」
案の定、絢音は土下座して謝る。
「だからよー、そういうのはよせ、金の事はいい、それよりお前……最近言わねぇが、親父、来てるんじゃねぇのか?」
辰はそんな風に謝られるのは嫌だったが、それよりも、絢音が父親の事を話さなくなった事を気にしていた。
「あの……はい、来てます」
絢音は起き上がり、迷いながらも正直に言った。
「だろうな、俺に気ぃ使うな、きたら来たって言え」
辰はもっと自分を頼って欲しいと、そう思っていた。
「はい……」
けれど、絢音にとって父親の事は口にするのも嫌な位負担になっている。
自信なさげに返事を返した。