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第11章 悲しい性
◇◇◇

金貸しの一件があった数日後に、また誰もいない時に父親がやって来た。

「絢音、父さんはもう金がなくなった、腹が減った、なにか食わせてくれ」

父親は借りた金も酒に使い果たし、また1文無しになっていた。

「なあ、頼む……、死にそうだ」

宿は出なければいけなくなった。
アパートに近い路地に居座り、夜は布団代わりに新聞紙を被って寝ている。
またルンペンに逆戻りだ。
体が動くなら、下働きでもなんでもすればいいのだが、アルコール漬けになった頭は正常に機能しない。
楽をして金を手に入れる事のみを考えているが、いくら世捨て人で怖いもの無しとはいっても、さすがに辰に付き纏う勇気はなかった。
あれからまた金貸し屋に行ったが、けんもほろろに追い返された。
その時に店主に罵られ、勝手に金を借りた事がバレたんだとわかり、これ以上辰に直談判するのは危険だと判断した。

絢音はこの日、耳を塞いで相手にしなかったが、父親はそれからも絢音がひとりの時を狙ってアパートに通った。
頼れるのはただひとり、血を分けた娘だけだ。

凝りもせずに通ったが、絢音は日に日に弱々しくなる声を聞いて、心が押し潰されそうな思いがした。
このままでは、本当に餓死するかもしれない……。
そう思ったら、罪の意識に苛まれる。
許し難い程腹の立つ人間だが、あの人がいたから自分が存在する。

そこで絢音は、玄関に弁当箱を置く事を思いついた。
但し、父親とは顔を合わせたくない。
来ると予測される日時に、前もって置いておくのだ。
弁当箱の中には、ご飯とおかずが沢山詰まっている。

初めて置いた日、予想通りに父親がやって来た。
父親はいつもと同じようにドアを叩いたが、足元に置かれた弁当箱に気づいた。

「絢音……、これを俺に……」

絢音は耳を澄ませて様子をうかがっていたが、父親はそのまま黙って居なくなった。

少し時間を置いて玄関の外を見てみたら、弁当箱はなくなっていた。

「……父さん」

父親が自業自得なのは分かっている。
分かりすぎる位分かっているから、情けなさと悲しみでいっぱいになり……泣けてきた。







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