この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
縁
第11章 悲しい性
後日、また辰が出かけている時に父親が来たが、絢音は前と同じように弁当箱を置いていた。
父親は空の弁当箱を置き、代わりに新しいのを持ち帰った。
そんな事が何度かあった後、ある日の正午前、たまたま父親とヤスが出くわした。
「お前、また来たのか……、ん?なに持ってんだ」
ヤスは呆れ返って言ったが、父親が手になにか持っている事に気づいた。
「絢音が俺に弁当を作ってくれる、だから取りに来た」
父親はすれ違って立ち止まり、振り向かずに言った。
「え……弁当?」
ヤスは唖然として父親の方へ向いた。
「ああ、あの子は優しい子だ、俺は……駄目な父親だ、そんなのはとうに分かってる」
父親は力なく呟き、再び歩き出した。
「お、おい……」
ヤスは一体どういう事なのか聞こうと思った。
「俺は乞食だ、ほっといてくれ」
だが、父親は投げやりに言って階段を降り始めた。
「なんなんだ?」
ヤスは怪訝な顔をしてドアの前に歩いて行った。
「絢音ちゃん、俺だ、ヤスだ」
ドアを叩いて声をかけたが、足元に置かれた弁当箱に気づき、それを拾い上げた。
「あ、はい……、今開けます」
絢音はハッとして立ち上がり、返事を返して玄関に走って行った。
ドアを開けたらヤスが弁当箱を持って立っている。
父親は来たら必ずドアを叩いて声をかけるので、たった今ヤスと出くわしたのはわかった。
「っと~、この弁当箱だが……、とりあえず上がっていいか?」
ヤスは空の弁当箱を片手に持ち、困ったような顔をして聞いた。
「はい、どうぞ……」
絢音はいつか出くわすんじゃないかと思っていたので、動揺してはいなかった。
「どうぞ、座ってください……、ご飯用意しますね」
ヤスが何を言うかわからないが、とにかく、昼食を用意する事にした。
父親は空の弁当箱を置き、代わりに新しいのを持ち帰った。
そんな事が何度かあった後、ある日の正午前、たまたま父親とヤスが出くわした。
「お前、また来たのか……、ん?なに持ってんだ」
ヤスは呆れ返って言ったが、父親が手になにか持っている事に気づいた。
「絢音が俺に弁当を作ってくれる、だから取りに来た」
父親はすれ違って立ち止まり、振り向かずに言った。
「え……弁当?」
ヤスは唖然として父親の方へ向いた。
「ああ、あの子は優しい子だ、俺は……駄目な父親だ、そんなのはとうに分かってる」
父親は力なく呟き、再び歩き出した。
「お、おい……」
ヤスは一体どういう事なのか聞こうと思った。
「俺は乞食だ、ほっといてくれ」
だが、父親は投げやりに言って階段を降り始めた。
「なんなんだ?」
ヤスは怪訝な顔をしてドアの前に歩いて行った。
「絢音ちゃん、俺だ、ヤスだ」
ドアを叩いて声をかけたが、足元に置かれた弁当箱に気づき、それを拾い上げた。
「あ、はい……、今開けます」
絢音はハッとして立ち上がり、返事を返して玄関に走って行った。
ドアを開けたらヤスが弁当箱を持って立っている。
父親は来たら必ずドアを叩いて声をかけるので、たった今ヤスと出くわしたのはわかった。
「っと~、この弁当箱だが……、とりあえず上がっていいか?」
ヤスは空の弁当箱を片手に持ち、困ったような顔をして聞いた。
「はい、どうぞ……」
絢音はいつか出くわすんじゃないかと思っていたので、動揺してはいなかった。
「どうぞ、座ってください……、ご飯用意しますね」
ヤスが何を言うかわからないが、とにかく、昼食を用意する事にした。