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縁
第12章 成れの果て
「俺が手を出すのは客をとれる年からだ、それ以下はやらねぇよ、いくら外道でも、最低限度の道理はある、なあ、親父さんよ、下働きを紹介してやる、働かねぇか?あんたは辛うじて父親としての自覚を持ってる、娘を俺に託したのがその証拠だ」
辰は自分なりに筋を通しているつもりだった。
それを話した後で、父親に仕事をするように勧めた。
「旦那ぁ……、俺なんかに情けをかけても、いい事はありませんぜ、現に今も酒が飲みたくてしょうがねぇ」
父親は薄ら笑いを浮かべて言った。
「酒か……、だったら少しばかり金をやる、その金で酒を飲んで、もういっぺん考えろ、働く気になったらアパートに来い」
辰は懐から財布をだし、札を何枚か引き抜いて父親に渡した。
「こいつはどうも……、ありがてぇ、やっぱりいい旦那だ、ありがとうございます」
父親は大袈裟に頭を下げて礼を言った。
「いいか?真面目に考えろ、じゃ、俺は行くからな」
辰は立ち上がり、父親に念押しをして空き地の外へ向かう。
実は、温泉宿の女将からよろず事を頼まれていた。
足早にさっき来た道を歩いたが、疎らに草の生えた地面を踏みしめながら……父親が改心する事を本気で願った。