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第13章 クズの決意
「いいんだよ、遠慮するな」

「絢音ちゃん、辰がこう言ってるんだ、素直に甘えな」

「あの……はい……、わかりました」

絢音は申し訳なく思ったが、ヤスに強く言われたらそれ以上何も言えなくなり、素直に頷いていた。



─────


それから3日ほど経ってヤスが街へ帰る事になった。

ヤスは宿に泊まっているので、早朝に街角で待ち合わせをした。
駅までは徒歩だから少し歩かなきゃいけないが、辰と2人で駅まで見送りに行った。

駅に到着したら、列車は既に来ている。
3人は改札口の少し手前に立ち、名残り惜しむように言葉を交わす。

「まぁ、絢音ちゃんの事は本人から言った方がいい、俺は黙っとくわ」

ヤスは2人の関係を親分に明かすつもりはなかった。

「ああ、折をみて話す、また遊びに来い」

辰は端から自分で言うつもりだ。
それよりも、旧友との再会を願っていた。

「是非来てぇな、絢音ちゃんの飯が食えるんだからよ、絢音ちゃん、ありがとな」

再会を願うのはヤスも同じだった。
笑顔で絢音に礼を言ったが、ここに居れば好きな時に温泉に浸かり、美味い飯にありつける。
溺死した父親は残念な事になってしまったが、それを除いたら……楽しくも貴重な日々だった。

「いいえ、私こそ、ヤスさんがいてくれて心強かったです」

絢音は、礼を言いたいのはむしろ自分の方だった。

「へへっ、そう言ってくれりゃ何も言うこたぁねぇ、あのな、辰が浮気ばっかしして、愛想を尽かしたら……俺んとこに言ってきな、俺は浮気はしねぇ」

ヤスはこれほど気分がいい事はなく、調子に乗って自分を売り込んだ。

「あのな~、なに言ってるんだよ、俺はすみれの事で心を入れ替えたんだ、女はやめた」

辰は苦笑いを浮かべ、自信ありげに断言する。







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