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縁
第13章 クズの決意
大柄な辰の傍らに寄り添う少女は、背も少し伸びて優しげな面立ちをしている。
誰もが親子とみなす2人だったが、絢音は久しぶりに陽の光を浴びて気分がよくなり、思い切って辰の腕をとった。
「ん……」
辰は絢音を見た。
「えへへ、ちょっとだけ……いい?」
絢音は悪戯っぽく笑って聞いた。
「ああ……」
辰は周りの目など気にしてはいなかった。
ひとこと返し、絢音の笑顔を見てホッとしていた。
2人は寄り添って歩き、温泉場に戻ってきた。
すると、向かい側の宿屋から若い男が出てきて、辰に向かって頭を下げる。
「兄貴、どうも……、ご苦労さんです」
派手なシャツを着たこの男は、辰の下につく若い衆だ。
若い衆は挨拶して顔を上げると、辰の横に寄り添う可愛らしい娘に目がいった。
「おお、なんだ、宿の婆さんはまだなにか言ってるか?」
若い衆が出てきた宿屋には、女将の手伝いをする古狸のような老婆がいる。
古狸は宿の女達の健康管理をしたり、時には産婆をする事もあった。
子を産み落とすのは百合子だけとは限らず、客に惚れて妊娠を隠す者がいる。
堕胎不可能な月齢まできてしまったら、あとは産むしかない。
そうやって産まれる子を取り上げ、養子先を斡旋するのも、古狸の仕事だった。
誰もが親子とみなす2人だったが、絢音は久しぶりに陽の光を浴びて気分がよくなり、思い切って辰の腕をとった。
「ん……」
辰は絢音を見た。
「えへへ、ちょっとだけ……いい?」
絢音は悪戯っぽく笑って聞いた。
「ああ……」
辰は周りの目など気にしてはいなかった。
ひとこと返し、絢音の笑顔を見てホッとしていた。
2人は寄り添って歩き、温泉場に戻ってきた。
すると、向かい側の宿屋から若い男が出てきて、辰に向かって頭を下げる。
「兄貴、どうも……、ご苦労さんです」
派手なシャツを着たこの男は、辰の下につく若い衆だ。
若い衆は挨拶して顔を上げると、辰の横に寄り添う可愛らしい娘に目がいった。
「おお、なんだ、宿の婆さんはまだなにか言ってるか?」
若い衆が出てきた宿屋には、女将の手伝いをする古狸のような老婆がいる。
古狸は宿の女達の健康管理をしたり、時には産婆をする事もあった。
子を産み落とすのは百合子だけとは限らず、客に惚れて妊娠を隠す者がいる。
堕胎不可能な月齢まできてしまったら、あとは産むしかない。
そうやって産まれる子を取り上げ、養子先を斡旋するのも、古狸の仕事だった。