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第13章 クズの決意
辰はその古狸にぶつくさ文句を言われていた。
ここの宿は遊郭ではないが、遊郭の女郎と同じように、水揚げという段階を踏まなければならない。
その水揚げ前に、慣らす目的で宿の関係者が女を抱く。
その役目は辰が担っていたが、必ずしも生娘とは限らず、慣らす必要のない女が殆どだった。
しかし古狸は、若い衆は余裕の無さから女を乱暴に扱うと主張する。
辰は『そんなのは一概には言えねぇ、ひとによるだろ』と言ったが、古狸は年を食ってるだけに頑固だ。
辰に任せると言って譲らなかった。

だが、すみれの一件があった後から、辰は慣らし役を断っている。
その為、古狸はご機嫌斜めなのだ。

「はい、言ってました」

若い衆は返事をしたが、婆さんの事より絢音の事が気になった。
辰の女にしては若いが、年はデビュー前の女と近いように思える。
多分女衒から受け取った女なんだろうと思い、好き放題に女を手に入れる事が出来る辰を羨んだ。

「ったく~、お前がやれ」

辰は苛立って言った。

「え、いやでも……、俺みてぇな下っ端は駄目っす」

若い衆はとんでもないとばかりに答える。

「今度婆さんに言っとく、だからよ、俺の代わりをやれ」

辰は若い衆に自分の代わりをさせるつもりだ。







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