この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
第13章 クズの決意
「やった、辰さん、ありがとう」

「ははっ、ああ……」

辰は子供みたいにはしゃぐ絢音を見て、思わず笑みが零れた。


遅い朝食を済ませた後、辰はさっきの宿に出向いた。
暖簾を潜り、見世の端っこに腰をおろしたら、気配を察して古狸が出てきた。

「おやまあ~、辰さんじゃないか、あんた、最近断ってばかりいるが、娘っ子を使い物になるようにしてくださいよ」

古狸は着物の裾を正して正座すると、早速辰に文句を言う。

「あのな、俺は引退だ」

「はあ?どーしてまた、あんた娘っ子好きだろ?」

古狸は納得できないといった表情で迫る。

「好きだった……、けどやめた」

「ははーん、わかった、あれだね、湯女の件、あんたが孕ませたって、宿の女将がぶつくさ言ってた、それで懲りたのかい?」

百合子の事は密かに噂になっていた。

「まあな」

辰は否定しなかった。

「あんたらしくもない、いいじゃないの、ひとりやふたり孕ませたとこで知れてる、あんたが慣らした娘っ子は上手い事客を掴む、この商売は客を掴んでなんぼさ、客あしらいの下手な女より、客に気に入られるような、男好きする女がいいに決まってる、辰さん、湯女の事なんか忘れちまいな、あそこの女将はがめついんだよ」

古狸は尚も食い下がり、百合子が働いていた宿の女将を腐した。

「よく言うわ、どんぐりの背比べじゃねぇか、あのな、俺の代わりは若い衆にやらせろ、ここに出入りしてる奴だ」

辰は呆れ顔でチクリと嫌味を言い、若い衆にやらせるように言った。

「だから、あんたじゃなきゃ駄目だって話しただろ?お礼は出すからさ、ね、頼むよ」

古狸は執拗に辰を頼ろうとする。

「断わる、いくら言っても、俺がやらねぇと言ったらそれまでだ、じゃ、俺は他に行くとこあるからよ」

辰はキッパリと断って立ち上がった。

「ちょっと辰さん、つれないねぇ」

古狸は困った顔をして追いすがるように辰を見たが、辰は振り返らずに暖簾をくぐって店を出た。




/158ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ