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縁
第13章 クズの決意
「やった、辰さん、ありがとう」
「ははっ、ああ……」
辰は子供みたいにはしゃぐ絢音を見て、思わず笑みが零れた。
遅い朝食を済ませた後、辰はさっきの宿に出向いた。
暖簾を潜り、見世の端っこに腰をおろしたら、気配を察して古狸が出てきた。
「おやまあ~、辰さんじゃないか、あんた、最近断ってばかりいるが、娘っ子を使い物になるようにしてくださいよ」
古狸は着物の裾を正して正座すると、早速辰に文句を言う。
「あのな、俺は引退だ」
「はあ?どーしてまた、あんた娘っ子好きだろ?」
古狸は納得できないといった表情で迫る。
「好きだった……、けどやめた」
「ははーん、わかった、あれだね、湯女の件、あんたが孕ませたって、宿の女将がぶつくさ言ってた、それで懲りたのかい?」
百合子の事は密かに噂になっていた。
「まあな」
辰は否定しなかった。
「あんたらしくもない、いいじゃないの、ひとりやふたり孕ませたとこで知れてる、あんたが慣らした娘っ子は上手い事客を掴む、この商売は客を掴んでなんぼさ、客あしらいの下手な女より、客に気に入られるような、男好きする女がいいに決まってる、辰さん、湯女の事なんか忘れちまいな、あそこの女将はがめついんだよ」
古狸は尚も食い下がり、百合子が働いていた宿の女将を腐した。
「よく言うわ、どんぐりの背比べじゃねぇか、あのな、俺の代わりは若い衆にやらせろ、ここに出入りしてる奴だ」
辰は呆れ顔でチクリと嫌味を言い、若い衆にやらせるように言った。
「だから、あんたじゃなきゃ駄目だって話しただろ?お礼は出すからさ、ね、頼むよ」
古狸は執拗に辰を頼ろうとする。
「断わる、いくら言っても、俺がやらねぇと言ったらそれまでだ、じゃ、俺は他に行くとこあるからよ」
辰はキッパリと断って立ち上がった。
「ちょっと辰さん、つれないねぇ」
古狸は困った顔をして追いすがるように辰を見たが、辰は振り返らずに暖簾をくぐって店を出た。
「ははっ、ああ……」
辰は子供みたいにはしゃぐ絢音を見て、思わず笑みが零れた。
遅い朝食を済ませた後、辰はさっきの宿に出向いた。
暖簾を潜り、見世の端っこに腰をおろしたら、気配を察して古狸が出てきた。
「おやまあ~、辰さんじゃないか、あんた、最近断ってばかりいるが、娘っ子を使い物になるようにしてくださいよ」
古狸は着物の裾を正して正座すると、早速辰に文句を言う。
「あのな、俺は引退だ」
「はあ?どーしてまた、あんた娘っ子好きだろ?」
古狸は納得できないといった表情で迫る。
「好きだった……、けどやめた」
「ははーん、わかった、あれだね、湯女の件、あんたが孕ませたって、宿の女将がぶつくさ言ってた、それで懲りたのかい?」
百合子の事は密かに噂になっていた。
「まあな」
辰は否定しなかった。
「あんたらしくもない、いいじゃないの、ひとりやふたり孕ませたとこで知れてる、あんたが慣らした娘っ子は上手い事客を掴む、この商売は客を掴んでなんぼさ、客あしらいの下手な女より、客に気に入られるような、男好きする女がいいに決まってる、辰さん、湯女の事なんか忘れちまいな、あそこの女将はがめついんだよ」
古狸は尚も食い下がり、百合子が働いていた宿の女将を腐した。
「よく言うわ、どんぐりの背比べじゃねぇか、あのな、俺の代わりは若い衆にやらせろ、ここに出入りしてる奴だ」
辰は呆れ顔でチクリと嫌味を言い、若い衆にやらせるように言った。
「だから、あんたじゃなきゃ駄目だって話しただろ?お礼は出すからさ、ね、頼むよ」
古狸は執拗に辰を頼ろうとする。
「断わる、いくら言っても、俺がやらねぇと言ったらそれまでだ、じゃ、俺は他に行くとこあるからよ」
辰はキッパリと断って立ち上がった。
「ちょっと辰さん、つれないねぇ」
古狸は困った顔をして追いすがるように辰を見たが、辰は振り返らずに暖簾をくぐって店を出た。