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第4章 嫉妬
◇◇◇

絢音が山あいの温泉場にやって来て数ヶ月が経った。

辰との暮らしは連綿と続き、暑い夏を過ぎてやがて秋が訪れたが、2人の関係は特に問題なく良好だった。

辰は絢音にみすぼらしい格好をさせるのを嫌い、絢音の衣類などはその都度適当な女を捕まえては買ってこさせ、それを絢音に渡していた。
絢音にとっては夢のような暮らしだった。
家にいた時は着物やモンペだったが、辰は洋服を買ってくれる。
辰は意図せずに実父よりも実父らしい事をしたが、それは単に見栄でやっている事で、絢音の将来については分からなかった。
女衒が連れてきた子供なんだから、成長したら売春宿に売るのが普通だ。
なのに、はっきりとした事は決められずにいた。

絢音は辰が外で何をしていようが、部屋に女を連れ込んで淫らな行為に及ぼうが、やるべき事を淡々とこなした。

また、辰はたまにドスを手入れする事がある。
絢音がそばで見ていると、辰は『このドスは両刃で名のある刀鍛冶に打たせた物だ』と自慢げに語ったが、絢音にドスの善し悪しは分からなかった。
切れ味の良さそうな刃を見ると不安になってくる。
辰が諍いに巻き込まれて怪我をしないようにと、それだけを願っていた。








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