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第6章 密やかに成長
辰ははじめ、絢音が何を言ってるのか理解出来なかったが、初潮を迎えたと分かって狼狽えた。
生理帯を用意する位、そのへんの売女に頼めば済む事だったが、絢音が女になったんだと思ったら、むず痒いような居心地の悪さを覚える。
兎に角、飛び起きて着替え、すぐに外へ出て行った。

近くの売春宿の暖簾を潜り、そこらにいた女に声をかける。
事情を話して金を渡したら、女はすぐに頼まれた物を調達してきたが、ニヤニヤしながら辰に渡した。

「辰さん、あんたがこんな物まで用意してやるとはね、あんたにしては意外だわ」

「うるせぇ、あいつは……あれだ、家族みてぇなもんだ、それ位してやるのは当たり前だろ」

辰は言い訳しながら、それが単なる言い訳じゃないような気がしていた。

アパートにとんぼがえりして、絢音に生理帯を渡した。

「ほら、これで何とかなるだろ」

「ありがとう……」

絢音は恥じらいながら礼を言った。

「ああ」

辰は返事を返して窓際に座り、煙草を出して火をつけた。

複雑な気持ちだった。
めでたい事なのに素直に喜べない。
女になったという事は、決断する日が近づいたという事だからだ。


─────


絢音が初潮を迎えた後から、更に一年が過ぎた。

2人は相変わらず上手くやっている。
絢音は12歳になり、徐々に大人びた顔つきに変わりつつあった。

辰は自分の好きなように行動し、絢音はそれを静観している。
こんなガキに……おかしな話だと思いながら、いつの間にか絢音に心を許すようになっていた。
絢音は我が子くらい歳が下なのに、自分の全て受け入れて見守っている。
そうするしかないから、仕方なく自分を認めているんだとわかっていたが、とても居心地がよかった。


この日、辰は頼りない膝へ頭を預け、気持ちよさそうに目を閉じていた。

「あ~いいな、そこら辺がたまらねぇ」

「そんなに気持ちいい?」

「ああ~いい…」







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