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縁
第6章 密やかに成長
絢音は耳かきを手にして耳掃除をしているのだが、食生活が改善された事で体がスクスクと成長し、柔らかな曲線を描く女らしい体つきになっている。
だが成長したのは体だけではなく、心も大人へと傾き始めていた。
ぼんやりとした憧れは、徐々に明確な想いへと固まりつつあった。
絢音の育った環境からすれば、辰との暮らしは想像を超える程贅沢なものであり、頬を叩かれる事もない。
絢音が辰を慕うのは自然な成り行きだった。
辰はウットリとした顔で絢音の膝に頭を乗せているが、絢音はだらけきった辰の顔を見ている内に、ふと秘めた気持ちが高ぶってきた。
「辰さん、私、辰さんの事……好きかも」
「あぁ?お前な……冗談言うな、からかってるのか?」
辰は絢音の気持ちに気づいていなかった。
「本気だったら……どうする?」
絢音は試すように聞いてみた。
「さあな~、やめた方がいいぜ……、そうアドバイスしてやる」
辰は適当に答えながら、耳を擽る感触を心地よく感じていた。
絢音を置いた時は先の事など全く考えておらず、要らなくなれば売春宿へ引き渡せばいいと思っていたが、この状況では到底できそうになかった。
「そっか……」
絢音はそれ以上余計な事は言わず、黙って耳掃除を続けていた。