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第8章 クズの純情
◇◇◇

初夏の爽やかな風が吹き抜ける朝。

辰は一通の電報を受け取った後、それを読んで表情を曇らせていた。
それは親分からきた電報であり、内容は……至急街へ戻れという事だった。

辰は少し前に、よからぬ噂を耳にしていた。
元々縄張り争いで揉めている組があるのだが、その敵対する組へ銀次という流れ者が加わり、その後から争いが激化しているという話だ。

自分が呼び戻される理由はそれが原因だと思い、直ぐにでも戻りたかったが、絢音をどうするか悩んだ。

この温泉場に絢音を預ける場所などある筈がない。
自分が街へ戻っている間は、自分の代わりにこのシマを任せる男がいるが、当たり前に自分と同じヤクザだ。
万一手を出されでもしたら……。
そう思って、絢音をできるだけ知人に合わせないようにしていた。
その男に絢音を預けるなど……絶対に無理だった。











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