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縁
第8章 クズの純情
辰は考えた末に、自分の娘だという事にして街へ連れて行く事にした。
さすがに、自分の娘に手を出すバカはいない筈だ。
絢音に街へ行く事を話し、その間親子で通すように言い聞かせた。
「じゃあ、お父さんって呼ぶの?」
「ああ、なんだか居心地がわりぃが、そう言っときゃ、お前に手を出される心配はねぇからな」
辰自身父親として振る舞うのはぎこちなく感じたが、そうするしかない。
「わかりました、お父さん」
絢音は試しに呼んでみた。
「うーん……、やっぱり変だ」
辰は変に気恥ずかしかったが、暫くはそれで通すしかない。
出発は明日朝に決めた。
絢音に準備をするように言い、自分も最低限必要な物を革張りのスーツケースに詰めていった。
急遽決めたので気忙しい一夜を過ごした。
翌日の早朝、2人は身支度を整えた後でアパートを出て駅へ向かった。
20分位歩いて駅に着いたら、街へ向かう列車が来ていた。
この駅が始発なので早めにホームに出ていたのだ。
辰は2人分の切符を買い、絢音を連れて列車に乗った。
絢音は窓際が良かったので、辰と向かい合って窓際に腰をおろした。
「辰さん、私、こんなの初めて」