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第8章 クズの純情
真剣な顔で念押しされ、急に緊張してきた。
辰は昨夜、絢音にざっくりと説明していた。
自分がヤクザという稼業で組という組織に属している事……。
絢音はヤクザについてはある程度理解していた。
いつも2階の窓から通りを見ているが、その時に温泉場の人達が辰の事を話しているのを聞いたからだ。
ただ、組は知らなかった。
辰は元々街に住んでいたが、30才になって温泉場を任されたのだ。
それを聞いたついでに、辰が現在38才だという事もわかったが、組には親分がいると言っていた。
辰は扉を開けて中に入ったので、絢音も後に続いて一緒に入ったが、中には親分がいるかもしれない。
絢音は辰の後ろに隠れるようにしながらコッソリ中を見回した。
左側に大きな本棚が置いてあり、書籍が雑然と並べてある。
そのわきに扉がある事から、奥にも部屋があるんだと思った。

右側へ目を移せば、壁際の角に応接セットとサイドボードが置いてあり、そこに若い男が立っている。
男は辰に向かって頭を下げた。

「兄貴、シマの仕切り、ご苦労さんです」








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