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第8章 クズの純情
「へぇ、偉いじゃねぇか、遊び好きなお前がガキを面倒みるとはな、いや~しかしよ、可愛らしい娘だな、へへっ、きっと亡くなった嫁に似たんだな、で、嬢ちゃん名前は?」

ヤスは厳つい辰には似ても似つかぬ絢音を見て、ニヤニヤしながら名前を聞いた。

「絢音です……」

絢音はジロジロ見られ、引き気味に小声で答えた。

「おいこら、あんまし見んな」

辰は絢音の背中を押して自分の後ろへ隠した。

「ケチだな~、可愛いっつってるんだぜ、親父なら喜ぶのが普通だろ」

ヤスはぶつくさ言ったが、辰がこんな可愛い娘を連れてくるとは思わなかったので、もっとよく見てみたかった。

「ああ、褒めてくれるのは悪い気はしねぇ、但し、この子は大事な娘だ、見せびらかすつもりはねぇ」

辰は疑われちゃマズいと思い、言葉を選んで返事をした。

「今からそんな箱入りじゃ、先が思いやられるな、な、そりゃそうと、今日は俺んとこに泊まれよ」

ヤスは呆れながら言うと、自分の家に泊まるように誘う。

「ありがてぇが、断る」

辰はヤスと話がしたかったが、誤魔化すのが面倒だった。

「んだよ、つれねぇな、一緒に飲もうぜ、その可愛い娘さんに酌をして貰いてぇなー、なあ辰、いいだろ?」

ヤスは諦めきれず、絢音をチラッと見て頼み込む。

「いいけどよ、絢音の酌は1回につき100万だ」

辰は絢音の事を言われて気に触り、意地悪く言った。

「はあ?100万~、ぼったくりかよ」

「いいや、正当な料金だ、うちの娘はバーの女じゃねぇからな」

「まったく、マジな顔で言いやがって……、わるかったよ、酌は無しでいい、な、久しぶりじゃねぇか、色々話もしてぇ、泊まってけ」

ヤスは苦笑いしながら謝り、それでもまだ誘った。
辰とヤスは気心のしれた仲だ。
滅多に会えない事もあり、ヤスがしつこく誘うのも無理はなかった。
そこまで是非に……と言われたら、断りづらい。

「しょーがねぇ……、わかったよ」

辰はヤスの家に泊まる事にした。
絢は2人が親しげに話すのを見ていたが、辰と親しい人間なら悪い人じゃない。
そう思って辰のわきについて歩き、3人でヤスの家に向かった。



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