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第8章 クズの純情
◇◇◇

ヤスの家は長屋みたいな所だった。
とは言っても部屋数は3つあるし、長屋にしては広い方だ。

家具もそれなりに揃えてあり、重厚な1枚板の座卓が置いてある。

辰とヤスは向かい合って話をしているが、酒が入って2人とも饒舌になっている。

「お前もあんま好き勝手やってると、恨みを買うぞ」

2人は女について話をしていたので、ヤスは辰から赤裸々な話を聞いて、冷やかし半分に言った。

「へっ、そりゃおめぇ、恨まれねぇようにやるんだよ」

辰は自信たっぷりに答える。

「おいおい、この野郎~、自慢か?そんだけ上手いっていいてぇんだろ」

「当然だ」

話は下ネタに移っていたが、ヤスはふと疑問に思った。

「言ったな~、お前な、娘がいるのによくできるよな、まさか見せちゃいねぇだろうな」

「こいつは最近引き取ったばかりだ」

辰は嘘をついてはぐらかした。

「ふーん、じゃあよ~、これからは連れ込めねぇな、娘の前でおっぱじめるわけにゃいかねぇだろ?」

ヤスは当然のように言った。

「ああ、そうだな……」

辰は後ろめたい気持ちに駆られたが、なんでもないふりをして言葉を返した。
絢音は女衒に押し付けられたガキだ。
だから、絢音が来て間もない時に絢音の前で女を抱き、その事後に、身を縮めて畳を見つめる絢音に向かって『俺と暮らすのは……つまりそういうこった、お前が家事をきっちりやれば俺はお前を養ってやるが、俺は自分の生き方を変えるつもりはねぇ』と言い聞かせた事がある。








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