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第8章 クズの純情
「やっぱりね、お母さんは……辰さんとは一緒に暮らさなかったの?」

「はい」

「そう、女がひとりで子供を育てるのは大変よ、よく頑張ったわね」

姐さんは同情するように言う。

「はい……」

絢音は自信なさげに頷いた。
急ごしらえで巧みに作り話をする程、器用ではないからだ。

「そうなの、辰さんはああいう人だから、いつか子供でも現れるんじゃないかなって、そう思ってたのよ」

姐さんは辰の生き様について知っている。

「あ、はい……」

それは絢音も十分わかっていた。

「ああ、ごめんね、悪くいうつもりはないの、それに、絢音ちゃんのようなしっかりした娘がいたら、辰さんも少しは真面目にやると思う、だけど、温泉場じゃあんまりよくないわね、学校は?」

姐さんは笑顔でひとこと断わり、学校について触れてきた。

「っと……、行ってません、私……ずっと家の手伝いをしてました」

それについてははっきりと答える事ができたが、絢音は生家にいた時から、学校には行かせて貰えなかった。

「あら、手伝いをするのは立派だけど、困ったわね、読み書きはできる?」

姐さんは心配そうに聞いた。

「少しなら……」







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