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第8章 クズの純情
そこに目的の銀次がいた。
顔に傷跡があるから間違いない。
銀次はちゃぶ台の前に座り、女をはべらせて酒を飲んでいる。

「銀次……」

辰が睨みつけると、銀次は女の肩を抱いて辰を見上げた。

「早川の……辰か?」

銀次は確かめるように聞いたが、片手に盃を持っている。

「そうだ」

緊張感のカケラもない様子を見て、辰はドスを握り直した。

「俺を探しに来たのか?」

銀次は5人が思った通り、辰の噂を聞いて姿を隠していた。
それは薮川組の指示だったが、銀次が当初連れ歩いていた面子は、ここにはいなかった。
薮川組は、ヤスが言ったように銀次をあてにしていたが、早川組が攻勢を強めた事で恐れをなした。
この1週間の間に、辰は薮川組の幹部を数名始末していた。
勢いを削がれた薮川組は、流れ者の銀次を疎ましく思い始めた。
流れ者というのは、所詮流れ者に過ぎない。
さっき殺った手下は銃を持っていたが、手練と言えるような者ではなく、銃を持ったのも今日が初めてだった。
そんなチンピラ紛いな人間をたった2名しかつけてなかったのは、薮川組は邪魔になった銀次を切り捨てるつもりでいるからだ。

「タマを貰いにきた」

事情がどうであれ、辰にとってはこれ以上無駄足を踏まずに済んだ、という事になる。

「ご苦労なこった、俺のような流れ者を殺ったとこで、名をあげる事はできねぇぞ」

銀次は場違いな位のらりくらりと話す。

「お前は仲間を殺した」

辰は銀次を注意深く見ていた。








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