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第8章 クズの純情
貰った報酬は、当分遊び暮らせる程の額はある。
教師の代わりを雇う位余裕だった。

「でも……やっぱり本物の先生には負けるんじゃない?」

姐さんは少しトーンを落としたが、何とかして絢音を引きとめようとする。
絢音がいた日々は、今までになく楽しかったからだ。

「こら、やめないか、辰は帰りたいんだ、勉強の事は親が決める事だからな、お前が口出しする事じゃない」

親分が見かねて口を挟み、姐さんに注意した。

「はい、そうですね……」

親分の言う事には逆らえない。
姐さんはひとこと返し、落胆したように目を伏せた。
絢音は姐さんを見て、何か悪い事でもしたような気分になった。
親分宅に預けられていたのは昼間とは限らず、辰が戻って来れない事もあって、ほぼ泊まりになっていた。
滞在中は食事や身の回りの世話など、姐さんから大変よくして貰ったが、姐さんは子分を引き連れて繁華街へ出向いた事がある。
絢音と一緒にショッピングを楽しんだのだが、絢音は姐さんに文房具や服などを買って貰った。
その中に、便箋と封筒があったのを思い出した。

「あの……、お姐さん、私……買って頂いた便箋に手紙を書きます、それを買って頂いた封筒で送ります」






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