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第8章 クズの純情
絢音は姐さんの事を『お姐さん』と呼んでいた。
歳から言えば亡き実母より歳上だが、他の人達が皆そう呼んでいる事もあり、絢音も皆に倣ってそう呼んだ。

「手紙をくれるの?」

姐さんはもう諦めていたので、やんわりと聞き返した。

「はい、必ず出します」

絢音は姐さんを見上げてハッキリと言った。

「うん……、ありがとう、楽しみに待ってる」

姐さんは絢音の気遣いを嬉しく思い、本当に優しい子だと、つくづくそう思っていた。


辰は親分に挨拶を済ませると、組の人間に見送られ、絢音を連れて親分宅を後にした。
一旦ヤスの家に向かったが、荷物を取りに行く為だ。

長屋に着いて部屋に上がり、絢音と一緒に荷物を纏めていると、玄関に勢いよく誰かが飛び込んできた。

「ヤス、いるか!」

絢音が玄関の方へ目を向けたら、見知らぬ男が息を切らして立っている。

「なんだよ騒々しい、つか、いきなり入って来んな」

ヤスは文句を言って男のそばに歩いて行ったが、ヤスも辰も、その男が誰なのかわかっていた。
銀次を共に探し歩いた、5人のうちのひとりだ。

「川から死体が上がった」

男は深刻な表情で言った。

「んだよ、土左衛門か?なもん……珍しくねぇだろ」

ヤスは取るに足らない事だと言わんばかりに顔を顰めて言う。

「そうじゃねぇ、上がったのはあん時の女だ、銀次が連れてった遊女だ」

しかし、男は土左衛門が誰なのか話し、それを聞いて辰は顔色を曇らせた。

「おお、確か桔梗っつったな、殺されたのか……可哀想に」

ヤスは気の毒がっているが、辰は憤りを覚えた。
不意に金を入れた袋に手を突っ込むと、適当に札束を掴み取り、それを持って玄関に歩いて行った。

「おう辰、今の話聞こえたか?」

男は辰を見て聞いたが、辰は握った金を男に差し出した。

「ああ、聞いた、これで埋葬してやれ」

こうなる事をまったく予測できなかったわけじゃないが、あの時はああするしか他になかった。
差し出した金は、女に対するせめてもの詫びだ。

「いいのか?たかが遊女だぜ、どのみち……年季あけの前に死んじまうのが殆どだ」







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