この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
縁
第1章 終わりと始まり
辰は苛立ちながらも、もう一度違う質問をした。
「は、はい……できます」
絢音は恐る恐るできると答え、辰はそれなら……と思った。
「飯も作れるか?」
絢音はじっと見つめられて萎縮してしまい、体を強ばらせて返事をした。
「はい……」
「よし、だったらな、売春宿はやめだ、お前、ここで炊事洗濯掃除……、それに飯を作れ」
辰は絢音をここに置くと決めたが、役に立たない時は売春宿へ連れて行けばいいと、軽い気持ちで決めていた。
「おい、いつまで突っ立ってんだ?こっちへ来い」
縮こまる絢音を見て眉をしかめたが、そばに来るように言って煙草に火をつけた。
「はい……」
絢音は怖さを必死に押し殺し、靴を脱いで部屋に上がった。
一歩一歩畳を踏みしめて辰のそばに歩いて行ったが、狭い部屋なので、あっという間に辰の傍へやってきた。
顔をあげる事ができず、胡座をかいて座る辰の足を見ていた。
「ふうー、そうだな、今夜はいい、明日から家の事をやって貰う、飯の材料も適当に揃えてやる、長旅で疲れただろ、布団は押し入れにある、それを敷いて寝ろ」
辰は煙を吐き出しながら言った。
絢音は……きっと怒鳴られて何か命じられるんだろうと、そう思っていたが、意外な言葉に驚いた。
「あ、あの、はい……」
慌てて返事を返し、恐々顔をあげてみた。
辰は窓の外へ片腕を出し、外を眺めながら煙草の灰を下へ落とした。
よく見たら、自分の父親と同じ位の年に思える。
これがもし父親なら、とっくに怒鳴っている筈だ。
こんな見た目が怖い人が、何故怒らないんだろう?
「おい、なに見てんだよ」
不思議に思ってつい辰を見ていたが、指摘されてビクッとなった。
「い、いえ……」
冷や汗をかきながら、誤魔化した。
「あのな、便所はそっちの廊下の先だ、風呂もだが、今日はもう小便して寝ろ」
辰はトイレと風呂の場所を教えると、再び寝るように言った。
「はい……」
絢音は訳が分からぬままに頷き、布団を敷いて疲れきった体を横たえた。
「は、はい……できます」
絢音は恐る恐るできると答え、辰はそれなら……と思った。
「飯も作れるか?」
絢音はじっと見つめられて萎縮してしまい、体を強ばらせて返事をした。
「はい……」
「よし、だったらな、売春宿はやめだ、お前、ここで炊事洗濯掃除……、それに飯を作れ」
辰は絢音をここに置くと決めたが、役に立たない時は売春宿へ連れて行けばいいと、軽い気持ちで決めていた。
「おい、いつまで突っ立ってんだ?こっちへ来い」
縮こまる絢音を見て眉をしかめたが、そばに来るように言って煙草に火をつけた。
「はい……」
絢音は怖さを必死に押し殺し、靴を脱いで部屋に上がった。
一歩一歩畳を踏みしめて辰のそばに歩いて行ったが、狭い部屋なので、あっという間に辰の傍へやってきた。
顔をあげる事ができず、胡座をかいて座る辰の足を見ていた。
「ふうー、そうだな、今夜はいい、明日から家の事をやって貰う、飯の材料も適当に揃えてやる、長旅で疲れただろ、布団は押し入れにある、それを敷いて寝ろ」
辰は煙を吐き出しながら言った。
絢音は……きっと怒鳴られて何か命じられるんだろうと、そう思っていたが、意外な言葉に驚いた。
「あ、あの、はい……」
慌てて返事を返し、恐々顔をあげてみた。
辰は窓の外へ片腕を出し、外を眺めながら煙草の灰を下へ落とした。
よく見たら、自分の父親と同じ位の年に思える。
これがもし父親なら、とっくに怒鳴っている筈だ。
こんな見た目が怖い人が、何故怒らないんだろう?
「おい、なに見てんだよ」
不思議に思ってつい辰を見ていたが、指摘されてビクッとなった。
「い、いえ……」
冷や汗をかきながら、誤魔化した。
「あのな、便所はそっちの廊下の先だ、風呂もだが、今日はもう小便して寝ろ」
辰はトイレと風呂の場所を教えると、再び寝るように言った。
「はい……」
絢音は訳が分からぬままに頷き、布団を敷いて疲れきった体を横たえた。