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第8章 クズの純情
絢音はあの時耳にした内容から、亡くなった遊女は、薮川組との諍いに巻き込まれた……という事は何となくわかっていた。

「ん、なんだ、まだ気分悪いか?」

「ううん、違う……、ヤスさんの家に来た人、遊女って言ってたけど、あれは……」

「ああ、あれはな、俺らが追ってた銀次って野郎と一緒にいたんだ、銀次は逃げる為に遊女を盾にした、で、奴が連れてったんだが……殺されてたってわけだ」

辰はあまり話したくなかったが、簡単に説明した。

「殺されたって……何故殺すの?殺す必要ある?」

絢音は酷いと思った。

「さあな、奴は非道な男だ、足がついたら困るからだろ」

「そんな……たったそれだけで殺しちゃうなんて……」

連れて行かれた遊女は、さぞ怖い思いをしただろう。

「だから、せめて……と思って、きちんと墓に埋めてやるように頼んだ、死んだ者は帰ってこねぇが、だからと言って、蔑ろにするわけにゃいかねぇからな」

「そうなんだ……」

辰は男に金を渡した。
絢音もそれは見ていたが、辰はあの時『遊女だからといって、虫けらのように死んでいいとは思ってねぇ』と言った。
絢音は辰が女を弄ぶのを間近に見てきただけに、その言葉は意外に感じた。
確かに辰は女好きで、少年にも手を出していた。
そこは褒められた事ではないが、亡くなった遊女を弔う気持ちを持っている。
それは立派だと思った。



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