この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
縁
第8章 クズの純情
辰が留守の時は直接持ってきてくれるが、嬉しそうに笑って服を手渡し『絢音ちゃんに似合うと思って、可愛らしい服を選んだの』そんな事を言って、買ったばかりの服を絢音の体にあてがう。
絢音からしたら随分年上のお姉さんだが、まるで自分の事のようにはしゃぐのを見たら、絢音も自然と嬉しくなるのだった。
また若い衆についても……。
絢音がまだ温泉場に来て間もない時に、一度だけ好奇心に駆られて通りに出た事がある。
その時に通りすがりの男に絡まれた。
男はどう見ても子供にしか見えない絢音を誘った。
絢音は怯えて後ずさりしたが、男は腕を掴んで宿に連れて入ろうとした。
絢音は怖くて堪らなかったが、子供が大人の男に抗える筈がない。
ズルズルと引きずられていると、右手にある売春宿から若い衆が飛び出してきた。
若い衆は男に向かって『その子は子供じゃねぇか、離してやれ』と言ったが、男はゴネて離さなかった。
若い衆は男に『どこのガキか知らねぇが、たまたま迷い込んだガキに淫行を行うのはルール違反だ、幼女趣味でもあるのか知らねぇが、言う事をきかねぇならお巡りを呼ぶしかねぇ、頭のおかしい奴は病院へぶち込んで貰え』そう言って脅した。
男は急にオドオドし始め、絢音から手を離して走りだし、そのままどこかへ逃げていった。