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第8章 クズの純情
若い衆は屈み込んで『嬢ちゃん、どこから来たんだ?』と絢音に声をかけた。
絢音が辰のところにいると話したら、若い衆は『ここは嬢ちゃんみてぇな子供が歩く場所じゃねぇ、辰さんに外に出るなと言われてるんじゃないか?』と聞いてくる。
絢音がコクリと頷くと、若い衆は『自分が連れてくから、部屋に帰ろう』と言って、絢音を部屋まで送り届けてくれた。

温泉場で働く人達は皆優しい。

「普通か……」

辰は複雑な気持ちでボソッと言った。

「えへへ、辰さん」

絢音は悪戯っぽく笑い、辰に寄り添ってくっついた。

「お、おい……」

辰は腕にしがみつかれてドキッとした。

「たまにはいいでしょ?」

絢音は無邪気に言う。

「おう……まあな」

辰は条件反射のように邪な気分になる自分を、心の中で叩きのめしていた。
しかし、そんな辰の苦悩を絢音が知る筈がない。
さっきよりも更にぴったりと体を寄せてしまった。






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