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第8章 クズの純情
「あ……、ははっ、あのよ~、ちょい離れようか」

胸が腕に当たっている。
ムラムラした気持ちが湧き上がり、辰は笑いながら誤魔化して離れるように言った。

「やだ、せっかく街に来たんだもん、こうしていたい」

絢音は普段我慢している。
こういう時位好きなだけ甘えてみたかったので、子猫のように辰の腕に頭を擦り寄せた。

シャンプーの香りがして、辰は益々ピンチになった。

「あ~、っと……、やべぇ、あのな、俺が女には最低な男だって事は……お前も知ってる筈だ、その~、だから離れてくれ」

辰は苦しい言い訳をして離れるように頼んだ。
絢音は辰がそういう気分になっている事を感じ取ったが、退くつもりはない。

「辰さん、私……構わない」

この機会に抱かれてもいいと、そう思って顔を近づけた。

「なっ、何してる……」

辰は焦りまくり、前に絢音が迫った時と同じように冷や汗ダラダラになった。

「キス……して」

「あ"っ……、あのな~、駄目だっつっただろ?」

柄にもなく狼狽え、及び腰になっている。

「約束はわかってます、キスだけ……、それならいいでしょ?」

絢音は辰と特別な思い出を残したかったのだが、辰は窮地に追い込まれた。

「いや、だからよ、キスしたら……尚更後にひけなくなる」

歯止めがきかなくなったらマズい。
そう思って、強引に絢音を引き離そうとした。

「もう、辰さんの意地悪!」

絢音は焦れったさに耐えかねて口走ったが、衝動的に辰に抱きついて唇を重ねた。

「んん~っ!」

辰は面食らったもいいとこで、びっくりして目を見開いた。
けど、柔らかな唇の感触を感じたら堪らなくなり、絢音を抱き締めて唇を吸った。
湧き上がる衝動を叩きのめしたかったが、好きだと思う気持ちが火に油を注いだ。
絢音をそっと床に押し倒し、首筋に顔を寄せて肌に唇を当てると、絢音はうっとりと目を細めている。
髭が肌を刺す感触も酒臭い息も、ずっと前から憧れ、求め続けてきた。

辰は胸を弄り、盛り上がった肉を浴衣の上からぎゅっと揉んだ。

「ん、辰さん……」

力強く揉まれて絢音の鼓動が高鳴った。






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