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縁
第9章 悪い癖
◇◇◇
温泉場に戻ってきた。
絢音は硫黄の匂いを嗅ぐとホッとする。
初めて嗅いだ時は臭いと思ったが、今では嗅ぎ慣れた匂いだ。
ちょっとだけ懐かしい部屋に戻ってきた。
薄汚れた狭い部屋に入ると、風呂敷包みを膝に乗せて座り込んだ。
辰はスーツケースを部屋の隅に置くと、ちゃぶ台を前に胡座をかいた。
「疲れたか?」
何気なく絢音を見て声をかけた。
「はい、ちょっと……」
確かに長旅は疲れたが、絢音にとっては心地よい疲れだった。
─────
街から帰った後、また以前と同じ生活が続いた。
辰はたまに喧嘩をして怪我をする事もあったが、腕っ節が強いだけにかすり傷程度で済んだ。
絢音は辰に買って貰ったネックレスを、肌身離さず身につけていた。
そうしてまた1年が過ぎてゆき、その間に、辰は絢音に家庭教師をつけた。
それは温泉宿で働く湯女だったが、元は街に暮らしていて、名家の娘だったらしい。
士族だったが、時代の波についていけず、落ちぶれて一家は離散。
温泉場に戻ってきた。
絢音は硫黄の匂いを嗅ぐとホッとする。
初めて嗅いだ時は臭いと思ったが、今では嗅ぎ慣れた匂いだ。
ちょっとだけ懐かしい部屋に戻ってきた。
薄汚れた狭い部屋に入ると、風呂敷包みを膝に乗せて座り込んだ。
辰はスーツケースを部屋の隅に置くと、ちゃぶ台を前に胡座をかいた。
「疲れたか?」
何気なく絢音を見て声をかけた。
「はい、ちょっと……」
確かに長旅は疲れたが、絢音にとっては心地よい疲れだった。
─────
街から帰った後、また以前と同じ生活が続いた。
辰はたまに喧嘩をして怪我をする事もあったが、腕っ節が強いだけにかすり傷程度で済んだ。
絢音は辰に買って貰ったネックレスを、肌身離さず身につけていた。
そうしてまた1年が過ぎてゆき、その間に、辰は絢音に家庭教師をつけた。
それは温泉宿で働く湯女だったが、元は街に暮らしていて、名家の娘だったらしい。
士族だったが、時代の波についていけず、落ちぶれて一家は離散。