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第9章 悪い癖
夕飯を作り終え、窓際に歩いて行ったら鍵を開ける音がした。
辰が帰ってきた。

「辰さん」

絢音は弾むように立ち上がり、そのまま玄関に向かった。
ドアが開き、辰の姿を見て思わず笑みが零れたが、笑顔はすぐに消えていた。

「あ……、それは」

辰は布に包まれた何かを抱えているが、それは……どう見ても赤ん坊に見えるからだ。
何故赤ん坊を抱いているのか、わけがわからない。
絢音はそばに行きかけた足を止めて、辰をじっと見ていた。

「ったくよ~、だから言ったんだ、責任取れねぇっつったのに、このザマだ」

辰は困惑した表情でボヤいたが、絢音はまさか……と思った。

「もしかして……百合子お姉さんの……」

恐る恐る聞いてみた。

「ああ、そうだ」

辰はひとこと返して赤ん坊を床に置いた。
赤ん坊は眠っているらしく、うんともすんとも言わなかったが、絢音は聞きたい事が沢山あった。

「じゃあやっぱり、辰さん……お姉さんに」

嫌な思いを抱きながら矢継ぎ早に問いかけた。



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