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女喰い
第6章 弥八郎
お美代は控えめに返事を返した。
子が死んだ時はショックだったが、体が癒えてくると、お美代自身肩の荷がおりたような気がしていた。

「けどよ、体が治ったら、親父はまた同じ事をするだろう、あのな、俺と一緒に来ねぇか? 」

弥八郎は考えがあってここにやって来ていた。

「えっ? 」

お美代は突然の申し出に驚き、目を見開いて弥八郎を見た。

「勘違いするな、俺がかっさらうフリをするんだ、俺はよ、ちゃんとした家を持たねぇが、博打で稼いだ金がある、長屋を借りてやるから、そこに住んで別の働き口を探せ、俺が口入れ屋に頼んでやる」

弥八郎は誤解のないように説明した。

「あのでも……」

お美代にとっては願ってもない話だが、たとえフリだとしても五作の事が気になる。

「五作か? 」

弥八郎は直ぐにわかった。

「はい」

「長屋に呼べばいい、そしたら会えるだろ? 」

「っと……、有難いお話なんですが、そこまでして貰う理由がありません、それに……そんな事をしたら旦那様がお怒りになるんじゃ……」

そこまで言ってくれて、お美代は是が非でも飛びつきたい心境だったが、弥八郎は最近知り合ったばかりで、彦兵衛の息子という立場だ。

「俺はな、親父には愛想が尽きてる、お袋が少しでもよくなっていれば……、そう思って戻ってきた、けどよ、お袋は相変わらず俺の事すらわからねー、俺は……お袋を救ってやる事が出来なかった、それもあるが、腹が立つのは親父だ、お袋を助けられねーなら、せめて……お美代ちゃん、お前を助けたい、俺は今こんな生き方をしてるが、郷田屋の若旦那として……、気の毒な奉公人を見殺しにはできねー、この機会に親父に一泡吹かせてやる」

弥八郎は自分が思っている事をあらいざらい話した。






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