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女喰い
第6章 弥八郎
「江衛門殿! 」

弥八郎は突然大声を出して江衛門を呼んだ。

「な、なんだ……」

江衛門は勢いに押され、引き気味に聞き返す。

「あなたは旗本奴に身を置いているが、俺は江衛門……貴殿を信頼できる人間だと常々そう思っている、あなたしか他にはいねー、ここはどうかひとつ……、武士として俺の頼み事を聞いて欲しい」

弥八郎は頭を下げて頼んだ。

「そ、そうか……そこまで言われたら……断るには忍びない、わかった」

江衛門は断りきれなくなり、長屋に行く事を承諾した。

「すまねー、恩に着るぜ」

弥八郎は笑顔で礼を言った。

「そうだな、では……衝立を持っていこう、仕切りを作れば大丈夫だ、我ながらいい案だな」

だが、江衛門は弥八郎から目を逸らし、独り言のようにブツブツ呟いている。
お美代はそれを見てなんだかホッとした気持ちになった。
江衛門が眉間に皺を寄せて真剣に考えているからだ。
このお侍さんなら信頼できそうな気がした。

「じゃ、先に行ってるわ、待ってるぜ」

弥八郎は江衛門の事をよく知っている。
だからこそ、用心棒を頼んだのだ。

「あいわかった」

江衛門は返事を返し、弥八郎は踵を返した。

「お美代ちゃん、行こう」

「はい」

弥八郎に促され、お美代は江衛門に向かって頭を下げ、弥八郎の後について行った。


四半時も歩かぬうちに長屋へ着いた。

すると、中に五作がいた。

「お美代、よかったな、本当によかった、弥八郎さんのお陰だ」

五作は戸口を開けた途端、お美代の前に駆け寄ってきて、嬉しそうに言った。

「ああ、五作、大丈夫だったか? 誰にも見られずに来れたか? 」

弥八郎は念の為聞いた。

「はい、大丈夫です、誰も見てませんでした」






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