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女喰い
第7章 助け舟
そしてこの日の夕方、弥八郎が長屋にやって来た。
戸口の前で慌てたようにお美代を呼ぶ。
お美代が弥八郎を招き入れると、弥八郎は座る暇もなく、五作の事を矢継ぎ早に話した。
ひと通り聞き終え、お美代は自分のせいだと思った。
「わたしのせいで……五作さんは」
自分との関係までバラしたと聞き、正直過ぎる事が仇となってしまった事に、酷く胸を痛めた。
彦兵衛は……相当腹を立てたに違いない。
折檻を受ける場面を想像したら、いたたまれなくなるのだった。
「ああ、まあー、らしいな、けどよ、五作はお美代ちゃんの力になりてぇからやったんだ、お美代ちゃんのせいじゃねー」
弥八郎はお美代のせいではないと言ったが、そう思うなという方が無理な話である。
「で、弥八郎、五作とやらはどうした、怪我をしているのではないか? 」
江衛門が上がり口に腰をおろして聞いた。
「ああ、可哀想に……、実家に戻ってるが、恐らく……傷が治ったとしても、体が不自由になる、歩けねぇ、頭をこっぴどく殴られてな、それが原因だ」
「あ……、歩けない? 」
お美代は衝撃を受け、金縛りにあったようにじっと前を見据えた。
「そりゃまた……ひどい真似をする、なあ、弥八郎、お主の父親を悪く言いたくはないが、ここは言わせて貰う、五作は生まれながらに知恵が足りぬと聞いた、しかし、真っ直ぐで正直で……彦兵衛が捨てた赤子を助けたそうではないか、力仕事が得意で損得無しに皆の為に精を出して働く、五作の事はお美代ちゃんから全部聞いた、そんな人間をそこまで痛めつけるとは……鬼のような所業だ」
江衛門はお美代と共に暮らす間に、五作の話を聞いていた。
その為、彦兵衛の度が過ぎたやり方には、心穏やかではいられなかった。
「いや、構わねぇ、俺はあんな奴を親父だと思っちゃいねぇ、いっそお上に訴え出てもいい、けど……、どんな親でも親は親だ、この手で殺るような真似はできねー」
戸口の前で慌てたようにお美代を呼ぶ。
お美代が弥八郎を招き入れると、弥八郎は座る暇もなく、五作の事を矢継ぎ早に話した。
ひと通り聞き終え、お美代は自分のせいだと思った。
「わたしのせいで……五作さんは」
自分との関係までバラしたと聞き、正直過ぎる事が仇となってしまった事に、酷く胸を痛めた。
彦兵衛は……相当腹を立てたに違いない。
折檻を受ける場面を想像したら、いたたまれなくなるのだった。
「ああ、まあー、らしいな、けどよ、五作はお美代ちゃんの力になりてぇからやったんだ、お美代ちゃんのせいじゃねー」
弥八郎はお美代のせいではないと言ったが、そう思うなという方が無理な話である。
「で、弥八郎、五作とやらはどうした、怪我をしているのではないか? 」
江衛門が上がり口に腰をおろして聞いた。
「ああ、可哀想に……、実家に戻ってるが、恐らく……傷が治ったとしても、体が不自由になる、歩けねぇ、頭をこっぴどく殴られてな、それが原因だ」
「あ……、歩けない? 」
お美代は衝撃を受け、金縛りにあったようにじっと前を見据えた。
「そりゃまた……ひどい真似をする、なあ、弥八郎、お主の父親を悪く言いたくはないが、ここは言わせて貰う、五作は生まれながらに知恵が足りぬと聞いた、しかし、真っ直ぐで正直で……彦兵衛が捨てた赤子を助けたそうではないか、力仕事が得意で損得無しに皆の為に精を出して働く、五作の事はお美代ちゃんから全部聞いた、そんな人間をそこまで痛めつけるとは……鬼のような所業だ」
江衛門はお美代と共に暮らす間に、五作の話を聞いていた。
その為、彦兵衛の度が過ぎたやり方には、心穏やかではいられなかった。
「いや、構わねぇ、俺はあんな奴を親父だと思っちゃいねぇ、いっそお上に訴え出てもいい、けど……、どんな親でも親は親だ、この手で殺るような真似はできねー」