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女喰い
第7章 助け舟
「ああ、そうするか」
江衛門もお美代を少し休ませてやろうと思った。
3人は茶屋に立ち寄り、店の主人に声をかけて床机に腰を下ろした。
主人は3人に茶を出した後で注文をきいた。
男2人は握り飯を頼み、お美代は団子を頼んだ。
歩きどおしだったので、三人は三様にホッとひと息ついていた。
お美代は周りの景色を眺めながら茶を啜り、こんな風に穏やかに過ごせる事を有難く感じたが、五作の事を思うとやり切れない気持ちになるのだった。
「ふうー、俺はあちこち旅をしてきたが、自分の生まれ育った土地というのは、ほっとするな、風の匂い、見慣れた風景……、そういうのは忘れ難いものがある、但し、親父に関しちゃ別だ、若い娘をおもちゃにしてるのは言わずと知れた事だが、男も同じだ、所詮虫けら程度にしか思ってねぇ」
弥八郎は故郷を慕う気持ちはあるが、彦兵衛の事は人の皮をかぶった欲の塊だと思っている。
「そうか、お前のように大棚の息子なら、通常は甘やかされて育ち、放蕩息子になる事が多い、お主の父は父としての役目を果たさず、悪い手本を示した」
江衛門は思った事をそのまま口にする。
「ああ、その通りだ、ま、放蕩息子にならずに済んでよかったわ、へっ……」
弥八郎は皮肉めいた事を言って苦笑いを浮かべた。
お美代は黙って2人の話に聞き入っていた。
江衛門が言うように、本来弥八郎は郷田屋の若旦那だ。
まかり間違えば、彦兵衛と同じ道を辿ったのかもしれないが、弥八郎は自ら苦労する道を選んだ。
渡世人であると、言葉で言うのは容易いが、柄の悪い連中を相手に喧嘩や博打……きっと並々ならぬ苦労をしてきたに違いない。
お美代はひとり静かに考え、弥八郎の苦労を慮っていた。
江衛門もお美代を少し休ませてやろうと思った。
3人は茶屋に立ち寄り、店の主人に声をかけて床机に腰を下ろした。
主人は3人に茶を出した後で注文をきいた。
男2人は握り飯を頼み、お美代は団子を頼んだ。
歩きどおしだったので、三人は三様にホッとひと息ついていた。
お美代は周りの景色を眺めながら茶を啜り、こんな風に穏やかに過ごせる事を有難く感じたが、五作の事を思うとやり切れない気持ちになるのだった。
「ふうー、俺はあちこち旅をしてきたが、自分の生まれ育った土地というのは、ほっとするな、風の匂い、見慣れた風景……、そういうのは忘れ難いものがある、但し、親父に関しちゃ別だ、若い娘をおもちゃにしてるのは言わずと知れた事だが、男も同じだ、所詮虫けら程度にしか思ってねぇ」
弥八郎は故郷を慕う気持ちはあるが、彦兵衛の事は人の皮をかぶった欲の塊だと思っている。
「そうか、お前のように大棚の息子なら、通常は甘やかされて育ち、放蕩息子になる事が多い、お主の父は父としての役目を果たさず、悪い手本を示した」
江衛門は思った事をそのまま口にする。
「ああ、その通りだ、ま、放蕩息子にならずに済んでよかったわ、へっ……」
弥八郎は皮肉めいた事を言って苦笑いを浮かべた。
お美代は黙って2人の話に聞き入っていた。
江衛門が言うように、本来弥八郎は郷田屋の若旦那だ。
まかり間違えば、彦兵衛と同じ道を辿ったのかもしれないが、弥八郎は自ら苦労する道を選んだ。
渡世人であると、言葉で言うのは容易いが、柄の悪い連中を相手に喧嘩や博打……きっと並々ならぬ苦労をしてきたに違いない。
お美代はひとり静かに考え、弥八郎の苦労を慮っていた。