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女喰い
第7章 助け舟
「わしは自分がやりたいようにやる、わしに従わぬ者は不要だ、お侍さん、刀では太刀打ちできん、退けた方が身のためだ」

だが、彦兵衛は手を引かなかった。
逆に江衛門に退くように言ったが、お美代はどうにかしなければ……と焦り、恐怖で足が竦んでいた。

「わああーっ! 」

その時、叫び声と共に彦兵衛の背後に大きな陰が現れ、手にした何かを彦兵衛目掛けて振り下ろした。
ゴツッと鈍い音がして、彦兵衛は地面に倒れ込んだ。

「はあ、はあ……」

肩で息をする大柄な男は……五作だった。
五作は両手で大きな石を抱え、放心したような目をして石をわきへ放り投げた。

「五作……!」

弥八郎が片手で肩を押さえ、五作の前に走り出た。

「弥八郎さん……、おら、旦那様を殺っちまっただ」

五作は自分でやった事にショックを受け、棒立ちになって頭から血を流す彦兵衛を見ている。

「と言うよりお前……足は」

弥八郎はとんでもない事になったと思ったが、それよりも五作を見て驚いた。

「おら……、旦那様に頭を殴られて少し歩けなくなった、でも休んだら歩けるようになった、だから……お美代ちゃんに会いに行こうと思ったんだ、そしたら旦那様がいて、おら、怖くなって隠れた、隠れて見ていたら……旦那様が弥八郎さんを傷つけた、おら、何がなんだか分からなかった、でも……旦那様が弥八郎さんを殺そうとしてるのはわかった、それで止めなきゃ駄目だと思って、その辺の石を掴んで……殴った」

五作はそのまんまを話した。
歩けなくなっていたのは事実だが、元来体は頑丈な方であり、運良く回復していた。

「そうだったのか……」

弥八郎はよかったと安堵していたが、今はそれを口にする事はできなかった。

「郷田屋は……死んだな」

江衛門はしゃがみ込んで彦兵衛に触れ、既に事切れている事を確かめた。




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