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女喰い
第5章 淫欲に塗れる中で……。
五作はドキドキしながら草木の陰に身を潜め、姿勢を低く保って歩きながら番人の様子をうかがっていた。
暫く歩いた所で、番人は不意に足をとめ、しゃがみこんですぐに立ち上がった。
腕に赤ん坊を抱いてない。
赤子は地面に置かれた……。
という事は、赤ん坊は捨てられた。
五作が考えていると、番人はキョロキョロと周りを見回し、五作とは反対方向に走り出した。

この辺りは山犬や熊、イノシシが出没する。
このままだと、赤ん坊は獣達の餌食になるだろう。
五作は赤ん坊に歩み寄り、か弱い声で泣きじゃくる赤ん坊を拾いあげた。
それから、少し考えた後で決心したように歩き出した。
自分の身を盾にして、生い茂る草木から赤ん坊を守り、ひたむきに突き進む。
無心に歩くうちに獣道を抜け、人が通る細い道に出た。
目の前に急な坂道があるが、赤ん坊をしっかりと抱き直して坂を登った。
息を切らして上に辿り着くと、そこには寺の門がある。

周りを見たら人気はない。
こっそりと門を開けて中に入ると、手入れされた庭が広がっている。
五作は本堂に向かって少しばかり歩き、綺麗に剪定されたツゲの木のそばで立ち止まった。
ツゲの木の傍らには低い平石がある。
しゃがみこんで平石の上に赤ん坊を置いた。

「生き抜くんだぞ」

赤ん坊に一言言って立ち上がり、踵を返して来た道を戻って行った。
徐々に遠くなる泣き声……。
五作は罪悪感に駆られ、自然と走り出していた。
門から外に出たら、坂道を転がるように走り続けた。






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